2026年9月8日、Xは収益化の制度を「オリジナル投稿」を基準にした新プログラムへ切り替えました。
直接の対象はクリエイターですが、Xで企業アカウントを運用する担当者や代理店にも関わる変更です。
返信欄とレポートの数字に何が起きうるのか、どこで読み替えが必要になるのかが分かります。
何が変わったのか:返信の表示回数は数えない
Xは2026年8月8日、従来の収益分配プログラム(Creator Revenue Sharing)を新制度「Original Content Rewards(オリジナルコンテンツ報酬)」に置き換えると発表しました。
旧制度は8月7日で新規登録を止め、9月7日で終了。
9月8日から既存メンバーを中心に、新制度への申請受付が順次始まっています。
Impress Watch の報道によると、新制度に参加するための条件は次のとおりです。
- 18歳以上であること
- X Premium / Premium+ / Premium Business のいずれかに加入していること
- 認証済みフォロワーが500人以上いること
- 過去90日間に、認証済みユーザーからのインプレッションが50万回以上あること(返信で得た分は含まない)
- アカウントの状態が良好で、定期的にオリジナルの投稿をしていること
ここで数えられる「インプレッション」は、普段の表示回数よりかなり狭い定義です。
Premium ユーザーのホームタイムライン上で、投稿の50%以上が画面に表示されたものだけが対象になり、同じアカウントからの重複・有料プロモーション・人為的に水増しされたものは除かれます。
投稿の中身にも線が引かれました。
他人のコンテンツを実質的にコピーしたもの、自動化の手段で作成・投稿されたもの、虚偽の内容、コミュニティノートが付いた投稿は、報酬の対象外です。
X の幹部 Allegra Jacchia 氏は、旧制度について「インセンティブがずれてしまっていた」(原文: incentives were misaligned)と説明しています。
旧制度は何を数えていたのか
変化の大きさは、旧制度と並べると見えてきます。
2023年に始まった当初の収益分配は、自分の投稿への返信欄に表示された広告を、認証済みユーザーが何回見たかで分配額が決まる仕組みでした。
つまり「返信が多く付く投稿」ほど稼げる設計です。
2024年10月にはこれが改められ、Premium ユーザーからのいいね・リポスト・返信といったエンゲージメントを基準にする形へ変更されています。
参加条件は「3か月で500万インプレッション」とされていました。
今回の新制度では、必要なインプレッションが500万から50万へ、数字の上では10分の1になりました。
ところが数え方は大きく狭まっています。
Premium ユーザーから、ホームタイムラインで、半分以上表示されたものだけ。
しかも返信は数えない。
ハードルが下がったように見えて、実際に積み上げにくい数字に変わったと受け止めています。
もう一つ見ておきたいのが、今年に入ってからの流れです。
Xは2026年3月にも、投稿者の地域からのインプレッションを重視する形へ分配ルールを変えようとしましたが、クリエイターから反発が相次ぎ、イーロン・マスク氏が数時間で導入を止めています。
今回はそれに続く2度目の大きな見直しで、「数字を攻略して稼ぐ動きをどう抑えるか」という同じ課題に、別の角度から手を入れた格好です。
単発のルール変更ではなく、線でつながった動きとして見るのが自然でしょう。
「インプレゾンビ」が稼ぐ理由は、制度の上ではなくなった
日本のXユーザーにとっていちばん身近なのは、「インプレゾンビ」との関係かもしれません。
話題の投稿の返信欄に、中身のない定型文やコピーした文章を大量に並べ、表示回数を稼ごうとするアカウントの俗称です。
新制度では、返信で得たインプレッションが参加条件にも報酬の計算にも入りません。
話題の投稿にぶら下がって表示回数を集めても、収益には一切つながらない。
少なくとも収益化の制度の上では、量産型の返信を続ける経済的な理由が消えました。
9月に入ってから、Xでは「タイムラインが静かになった」「収益化が終わったのではなく仕組みが変わった」といった投稿が目立つようになっています。
とはいえ、現時点では体感の声が中心で、返信スパムがどれだけ減ったかを示す定量的なデータはまだ出ていません。
また、返信欄のスパムには外部サイトへの誘導や詐欺目的のものもあり、収益化と無関係な動機はこの変更では消えません。
企業アカウントの運用に響く3つのポイント
企業アカウントの多くは、そもそも収益化プログラムに参加していません。
それでも、この変更は日々の運用やレポートに間接的に効いてきます。
1. 返信数の減少が「反応の低下」とは限らなくなる
これまで話題になった投稿には、インプレゾンビの返信が一定数まとわりついていました。
それが減っていけば、ブランドの投稿に付く返信数は、本当の反応とは関係なく下がる可能性があります。
地味ですが、レポートの読み方としては無視できない変化です。
9月以降の返信数を前月や前年と比べて「反応が落ちた」と判断すると、ノイズが抜けただけのものを成果の低下として報告してしまいかねません。
リプライで応募する形式のキャンペーンでも、過去の実施回と件数を並べるときに同じことが言えます。
2. 収益化のルールであって、表示アルゴリズムの変更ではない
誤解しやすい点なので、はっきりさせておきます。
今回変わったのは「誰にいくら払うか」の計算ルールで、タイムラインにどの投稿を出すかという表示の仕組みが変わったと、Xは説明していません。
「返信で露出を稼ぐ運用はもう通用しない」と言い切るのは、現時点では飛躍です。
一方で、Xが「本人発のオリジナル投稿がホームタイムラインでしっかり読まれること」を価値の中心に置き直したのは確かで、プラットフォームが何を良い投稿とみなしているかを知る手がかりにはなります。
3. インフルエンサー選定の見方が一段変わる
クリエイター側の動機は、この変更で大きく動きます。
これまで返信やひと言添えるだけの投稿で表示回数を伸ばしていたアカウントは、同じやり方では収益化できません。
今後は、自分のオリジナル投稿でどれだけ読まれるかに力を入れるクリエイターが増えていくはずです。
企業がインフルエンサーやクリエイターと組むときも、「総インプレッションが大きいか」だけでなく「オリジナル投稿そのものにどれだけ反応が付いているか」を見る意味が増します。
便乗型の表示回数が多いアカウントほど、9月以降に数字の見え方が変わるかもしれません。
いつ、何を見直すか
急いで運用を変える必要はありませんが、次のタイミングで反映しておくと、あとで数字の説明に困らずに済みます。
- 9月分の月次レポートから、9月7日〜8日を制度の切り替え点として注記しておく。
返信数の前後比較は、この境目をまたぐ前提で読む - 次にインフルエンサーを選ぶとき、総インプレッションに加えて、オリジナル投稿ごとのいいね・リポスト・ブックマークを確認する
- 自社アカウントの投稿方針を見直すとき、話題の投稿への便乗返信に露出を頼っていないかを棚卸しする
いずれも「新しい施策を足す」というより、「数字の読み方を一段丁寧にする」種類の見直しです。
SocialReport の視点から
SocialReport の X アカウント分析では、追跡しているアカウントの投稿ごとに、いいね・リポスト・リプライ・ブックマーク・インプレッション(実測値)を並べて確認できます。
9月8日の前後で自社や競合アカウントの返信数とブックマーク数の推移を見比べ、「返信が減ったのは反応の低下か、ノイズが抜けただけか」を切り分ける材料として使えます。
X のキーワード調査でも、投稿一覧をリプライ数やインプレッションで並べ替え、話題の広がり方の変化を追うことができます。
一方で、新制度が数える「Premium ユーザーのホームタイムラインで、半分以上表示されたインプレッション」は X 側の区分で、SocialReport ではこの内訳を分けて見ることはできません。
こうした自社アカウントの細かな指標をウォッチする領域は、「アカウント運用サポートツール」として構想を進めている段階です。
クレジットカード不要で、登録から1週間の無料お試しを用意しています。
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まとめ
Xの新制度は、返信の表示回数を収益の計算から外し、「本人のオリジナル投稿が、ホームタイムラインでちゃんと読まれたか」を基準に据え直しました。
企業アカウントに直接の影響は小さく見えますが、返信欄のノイズが減っていけば、返信数という身近な数字の意味が変わります。
9月以降の数字を前と同じ物差しで読まずに済むよう、切り替え点を意識してレポートを組むことが、この変更でいちばん実務に効くポイントだと考えています。
最終更新:2026-09-14