キア・スターマー英国首相は2026年6月15日、TikTok・Instagram・YouTube・X・Snapchatなど主要SNSの16歳未満への提供を禁じる方針を正式発表しました。
2027年春の施行を目指し、年内に法案を議会へ提出する予定です。
何が決まったのか
今回の方針では、TikTok・Instagram・YouTube・Facebook・X・Snapchat・Threads・Twitchが禁止対象のプラットフォームとして列挙されています。
一方で、WhatsApp・Signal などのメッセージングサービスや教育目的のサービス、音楽ストリーミングは対象外です。
スターマー首相は発表の場でこう述べました。
「SNSは子どもたちを不幸にし、危険にさらしている。
テクノロジー大手には機会があったが、失敗した」。
責任の所在をプラットフォーム企業に明確に置き、違反した場合はグローバル年間売上の最大10%を罰金として科すという強硬姿勢を打ち出しています。
具体的な年齢確認の技術仕様は、通信規制機関Ofcomが2026年10月までに「高度に効果的な年齢確認(HEAA)」の方法を提示する予定です。
つまり現時点では「禁じる意思」は固まっているが、「どう禁じるか」はこれから決まるという状況です。
91%の保護者が支持——でも子どもたちは?
この政策の下地となった意見公募には約11万6,000件もの回答が集まりました。
英国史上2番目の規模です。
保護者の91%が16歳という禁止年齢に賛成し、83%以上が「SNSのリスクはメリットを上回る」と回答しています。
注目すべきは、若者の3分の2もが「16歳未満は特定プラットフォームにアクセスすべきでない」に同意しているという点です。
SNSの悪影響を最も身近に感じているのは、当の若者自身でもあるのかもしれません。
オーストラリアが先に走った——見えてきた課題
英国に先駆けて2025年12月、世界で初めて16歳未満のSNS禁止法を施行したのがオーストラリアです。
施行後、約470万件の未成年アカウントが閉鎖されました。
数字だけ見れば大きな成果です。
しかし現実はそう単純ではありませんでした。
施行からわずか数日で「回避方法ガイド」がネット上に出回り、VPNを使った迂回が横行。
13歳の少年がSnapchatの顔認識年齢確認を「シワを描く」という方法で数分で突破した事例も報告されています。
保護者からは「子どものアクセスに実質的な変化がない」という声も多く上がっています。
さらに専門家からは、「規制外の環境でより危険なコンテンツにさらされるリスクがある」という警告も出ています。
禁止によって子どもがSNSから離れるのではなく、モニタリングされにくい闇のコミュニティへ流れる可能性があるという懸念です。
プライバシーという別の問題
英国でも批判の声は少なくありません。
サリー大学のAlan Woodward教授は「年齢確認は『全員を確認する』ことを意味する。
政府がテクノロジーを悪用した事例は何度もある」と指摘します。
市民自由団体「Big Brother Watch」は「オンラインの匿名性の終焉」と強く反発し、年齢確認で収集された機密データがプラットフォームに永久に残るリスクを訴えています。
子どもを守るための規制が、全国民の個人情報を民間企業に差し出す結果になりかねない——この矛盾は、年齢確認を義務化するあらゆる法規制が必ず直面するジレンマです。
日本はどう動くか
日本の総務省は2026年6月にまとめた報告書案で、「単なる禁止ではなく安心・安全に利用できる環境整備が重要」と明記し、一律の年齢制限には否定的な立場を示しています。
自民党も年齢確認の厳格化やデフォルト保護設定の強化を求める方向ですが、禁止には踏み込んでいません。
SNS事業者への規制要求と、プラットフォームに責任を転嫁しないための国内環境整備——日本の議論はその中間をいく形で進んでいます。
こども家庭庁の検討会では「青少年インターネット環境整備法の改正」が議論される予定で、今後の動向が注目されます。
まとめ
英国の16歳未満SNS禁止方針は、保護者の強い支持と政治的意思を背景に具体化が進んでいます。
しかしオーストラリアの先行事例が示すように、法律の制定と実効性の確保は別問題です。
年齢確認技術の精度、プライバシーとのトレードオフ、規制をすり抜けた先に何が待っているか——2027年春の施行に向けて、これらの問いに英国がどう答えを出すかが世界的な注目点になります。
最終更新:2026-06-22